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【面白い数学】棒1本で地球の半径を測ったアリストテレス

こんにちは。福田泰裕です。

私たちが住んでいる地球の半径を知っていますか?

現在は人工衛星による測定で、地球の半径が約6,400kmだということが分かっています。

しかし、人間は人工衛星ができるより遥か前に地球の大きさを測ろうと様々な方法を行ってきました。

今回は、棒1本で地球の半径を測ったアリストテレスのお話をします。

最後まで読んでいただけると嬉しいです。

目次

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地球の半径を測った古代ギリシア人のアリストテレス

古代の多くの文明では、地球は平面だと考えられていました。
コロンブスが世界一周航海を達成するまで地球は平面なの球体なのか決着しませんでした。

地球が球体であるかどうかもはっきりしていない中、アリストテレスが人類史上初めて地球の大きさを測ろうとしました。なんと、紀元前195年の出来事です。

地球は球面だと確信する

紀元前236年に、アリストテレスはアレクサンドリアの図書館長に任命されました。
そのとき、「シエナの街では、夏至になると太陽光が井戸の底まで届く」ことを知りました。

同じ夏至の日、シエナから925kmほど離れたアレクサンドリアに垂直に棒を立てると、影ができていました。

もし地球が平面なら、アレクサンドリアに立てた棒に影はできないはずです。

これらのことから、地球は平面ではなく球体であると確信したアリストテレスは、この影を利用して地球の半径を測る方法を考えました。

棒の影の角度を測り、地球の半径を計算する

アレクサンドリアで垂直に立てた棒の長さと影の長さを測定すると、角度が \(7.2^{\circ}\) でした。

このことから、アリストテレスは次のように考えました。

この状況を簡略化して…👇

太陽光は平行に入ってくると考えると、\(AO /\!/ CD\) です。
よって、\(\triangle OAB \sim \triangle DCB\) となります。

そのため、地球の中心を \(O\) とすると、\(\angle AOB = 7.2^{\circ}\) となるはずです。

次に、実際に棒の長さと影の長さを測ってみると、

$$(棒の長さ)=(影の長さ) \times 7.936$$

であることが分かりました。

地球の半径を \(R\) kmとすると…👇

\(\triangle OAB \sim \triangle DCB\) なので、\(OB = AB \times 7.936\) が成り立ちます。

\(AB=925\) km なので、

$$OB=925 \times 7.936 = 約 7341 \rm{km}$$

と、地球の半径を計算することができました!

扇形の弧の長さを使っても計算できる

アリストテレスは上のように、相似な直角三角形を利用して地球の半径を計算したようです。

しかし、扇形の弧の長さを使っても計算することができます👇

このように、半径 \(R\) km、中心角 \(7.2^{\circ}\) 、弧の長さ \(925\) kmの扇形と考えることができます。

円周率 \(\pi\) を用いて、これらの関係を式に表すと…👇

$$925 = 2R \pi \times \frac{7.2}{360}$$

紀元前3世紀頃には、円周率 \(\pi\) は約 \(3.14\) であることは分かっていました。
この式を \(R\) について解くと…👇

$$R = \frac{925 \times 360}{2 \times 3.14 \times 7.2} = 7364.64 \dots$$

以上から、地球の半径を約 \(7364\) kmと計算することができました。

なぜ大きな誤差ができたのか?

地球の半径を1本の棒で測るという壮大な計画は無事に終了しました。

しかし、どちらの計算方法でも実際の地球の半径(約6,400km)と比べて大きな誤差があります。
なぜこのような誤差が生じたのか考えてみましょう。

誤差の理由①:強引に直角三角形で近似したため

まず、アリストテレスは直角三角形に近似して地球の半径を求めていましたが、実際の図は直角三角形にはなりません。

シエナ(地点A)、アレクサンドリア(地点B)、影の先端(地点C)は地球上にあるため、実際は円周上にありますが、強引に直線上にあるとして考えています。

また、\(OA\) も \(OB\) も地球の半径なので、\(\triangle OAB\) は \(OA=OB\) の二等辺三角形になります。

つまり実際は、次のような図になるのです👇

この図を、アリストテレスは次のように捻じ曲げて考えました👇

地球規模でできる \(\triangle OAB\) は、棒と影でできる \(\triangle DCB\) のおよそ700万倍の大きさです。
少しの近似が大きな誤差になってしまうのも当然といえます。

誤差の理由②:シエナとアレクサンドリアの距離の計測ミス

そもそもなのですが、実はシエナとアレクサンドリアの距離が違います。

アリストテレスは距離を925kmとして計算していましたが、実際は849kmです。
この849kmを使って計算し直してみましょう。

三角形の相似を使う方法だと、

$$OB=849 \times 7.936 = 約 6738 \rm{km}$$

円の弧の長さを使う方法だと、

$$R = \frac{849 \times 360}{2 \times 3.14 \times 7.2} = 約6760 \rm{km}$$

となるため、かなり精度の高い計算になります。
もし測量の技術がもっと進んでいれば、より正確な地球の半径が求まっていたことでしょう。

誤差の理由③:地球は球体ではない

地球は平面か球体か…という話でしたが、実際はどちらでもありません。

実際の地球は、極半径が約6356.775km、赤道半径が約6378.136kmと、赤道半径の方が約21km大きいのです。

しかし、このことが分かるのはずーっと後のことなので、紀元前195年の時代に生きていたアリストテレスは知る由もなかったことでしょう。

まとめ:地球の半径を測った発想がすごい!

いかがでしたでしょうか。

様々な誤差を生む理由があったため、紀元前195年にアリストテレスが計算で求めた地球の半径(約7,364km)は、実際の地球の半径(約6,400km)と大きな差ができてしまいました。

しかし衛星や飛行機もなく、地上で暮らしていた紀元前の時代に、1本の棒だけを使って地球の半径を測定する方法を思いついたことに驚きです。

実際に地球の長さを測定することができなくても、数学の力によって通常では目にすることのできないような世界を見ることができるのですね!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

質問やご意見、ご感想などがあればコメント欄にお願いします👇

福田 泰裕

33歳、2児の父。 山口県の高校教師で、担当は数学と情報。 毎日定時ダッシュするために、働き方改革を実施中。 数学教育・情報教育・教師の働き方・教師のEXCEL講座などを記事にしています!