『情報Ⅰ (2)コミュニケーションと情報デザイン』授業の具体例一覧【学習指導要領】

プログラミング教育

こんにちは。福田泰裕です。

学習指導要領が改訂され、平成30年に新しい学習指導要領が告示されました。
高校では令和3年度(2022年度)の新入生から年次進行で実施されていきます。

この記事では新たに始まる『情報Ⅰ』について、学習指導要領に示されている授業の具体例を紹介していきます。

記事が長くなりすぎたので、章ごとに分けています。
この記事は、『(2) コミュニケーションと情報デザイン』に掲載されていた授業の具体例です。

『(1)情報社会の問題解決』の授業具体例については、こちらの記事をご覧ください👇

最後まで読んでいただけると嬉しいです。

目次

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『(2)コミュニケーションと情報デザイン』の指導内容

学習指導要領によると、『(2)コミュニケーションと情報デザイン』では次のようなことを指導するように記載されています。

メディアとコミュニケーション手段及び情報デザインに着目し,目的や状況に応じて受け手に分かりやすく情報を伝える活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

 (ア) メディアの特性とコミュニケーション手段の特徴について,その変遷も踏まえて科学的に理解すること。

 (イ) 情報デザインが人や社会に果たしている役割を理解すること。

 (ウ) 効果的なコミュニケーションを行うための情報デザインの考え方や方法を理解し表現する技能を身に付けること。

イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

 (ア) メディアとコミュニケーション手段の関係を科学的に捉え,それらを目的や状況に応じて適切に選択すること。

 (イ) コミュニケーションの目的を明確にして,適切かつ効果的な情報デザインを考えること。

 (ウ) 効果的なコミュニケーションを行うための情報デザインの考え方や方法に基づいて表現し,評価し改善すること。

【情報編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 27ページ

まず、身に付けるべき事項が明記されています。
まとめると、『(2)コミュニケーションと情報デザイン』の学習目標は以下のようになります。

『(2)コミュニケーションと情報デザイン』の学習目標
  1. メディアの特徴やコミュニケーショの手段の特徴の変遷も科学的に理解し、目的に応じて適切に選択できるようになる。
  2. 情報デザインが人や社会に果たしている役割を理解し、目的に応じて適切かつ効果的な情報デザインを考えることができる。
  3. 効果的なコミュニケーションを行うための情報デザインの考え方や方法を理解して表現して、それを評価し改善できる。

単に知識として理解するだけではなく、それらを選択・表現し、評価・改善する力が求められているようです。

『情報Ⅰ (2)コミュニケーションと情報デザイン』の授業具体例一覧

標識

それでは、学習指導要領解説に記載された授業の具体例をまとめていきます。
それぞれに私の個人的な意見や、授業についての考えも書いているので、参考になれば嬉しいです。

(長くなり過ぎたので、この記事は『(2)コミュニケーションと情報デザイン』のみです。)

『情報Ⅰ』授業具体例⑥:情報のデジタル化の手続きを行い、データを圧縮する実習

電子メールの送受信や SNS でのコミュニケーションの際に利用する数値や文字,静止画や動画,音声や音楽などの情報について,アナログ情報をデジタル化する一連の手続(標本化,量子化,符号化)を行い,効率的に伝送するためにデータの圧縮を行うなどの実習が考えられる。

【情報編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 28ページ

アナログ情報をデジタル情報に変換する手順は、文字、画像、音声など、種類によって異なります。

これらの手順について学習することは容易ですが、その実習となると様々なことが考えられます。

最も単純な方法は演習プリントを使って、実際に手順を踏んでみる実習です。
例えば「こんにちは。」という短い文章や小さい画像ファイルを、手順に沿ってデジタル情報に変換していく…というのが考えられます。

プリントでの実習の長所は、手順をしっかり確認しながら進められるという事です。
実際に書くためには、手順をしっかり確認し、理解する必要があります。

短所は、小さな情報しか扱えないという事です。
アナログ情報のデジタル化は細かい作業の繰り返しなので、ミスしないように進めるにはかなりの時間がかかります。
情報が小さいと、最後の『データの圧縮』の恩恵が得られません。

次に考えられるのが、EXCELなどでワークシートを作成しておき、そのシートを使う実習です。
デジタル化の手順をある程度自動化しておくことで、作業の効率化を図ります。

このEXCELなどのワークシートを使う実習の長所は、多くの情報を扱えるという事です。
単純作業が自動化されているので、ある程度の長文でもデジタル表現に変換してくれます。
また、複数の情報をデジタル表現に変換することで、その仕組みを体系的に理解することができるようになります。

短所は、デジタル表現への変換手順が分からなくてもできてしまう事です。
手順を理解していなくてもボタン一つで変換できてしまうので、理解していなくても実習が完了してしまいます。

どちらの実習にも、長所と短所があります。
どの方法を選ぶのかは、生徒たちの実情に合わせていけば良いでしょう。

『情報Ⅰ』授業具体例⑦:情報デザインについて考える活動

道路標識やトイレの場所などを示すサイン,Web ページなどの情報デザインを取り上げ,情報を抽象化する方法としてアイコン,ピクトグラム,ダイヤグラム,地図のモデル化など,情報を可視化する方法として表,図解,グラフなど,情報を構造化する方法として,文字の配置,ページレイアウト,Web サイトの階層構造,ハイパーリンクなどを扱うことが考えられる。

【情報編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 29ページ

現代の私たちの身の回りには、アイコンやピクトグラムなどで溢れています。
まずはそれらを観察し、「なぜ伝わりやすいのか」を考えると良いでしょう。
それを踏まえて、自分たちで標識やピクトグラム、ポスターを作成する活動が考えられます。

次に、Twitterでも流行っている『図解』です。
例えば短い小説、国語の教科書に載っている評論、社会や理科の教科書に出てくる用語などをA4用紙1枚に図解させる…という活動も面白そうです。
作成するために使用するソフトは、POWERPOINTが直感的に操作できるのでオススメです。

『文字の配置,ページレイアウト,Web サイトの階層構造,ハイパーリンクなどを扱う』というのは、WEBページの作成が最も効果的でしょう。
HTMLの学習と合わせれば、プログラミングの第一歩にもなります。

『情報Ⅰ』授業具体例⑧:情報デザインについて考える活動

情報デザインの考え方や方法を活用した作品制作を取り上げ,Web ページの作成や Web サイトの設計,アプリケーション等のインタフェースの作成,クラスの実態調査の結果から問題の解決策を提案するポスターの作成などを扱うことが考えられる。また,作品の評価や改善を取り上げ,学習活動の振り返り,自己評価や相互評価,改善の具体的な方法などについて扱うことが考えられる。

【情報編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 30ページ

この具体例⑧は、具体例⑦と連携させると考えやすいと思います。

具体例⑦で標識やポスター、図解などについて考え、それらを踏まえてWebページの作成やポスターなどを作成し、振り返り・自己評価・改善を行うのが具体例⑧です。

生徒たちで相互に作品を見せ合い、「もっとこうしたら良い」という改善点を見つけ、改善していく活動を取り入れると良いでしょう。

『情報Ⅰ』授業具体例⑨:情報デザインの問題を発見し、解決策を検討する活動

学校紹介や学校行事などの特別活動などと連携した Web ページやポスター等のコンテンツの制作を取り上げ,情報デザインに関する問題を発見するためにブレーンストーミングや情報通信ネットワークを通じた情報収集を行い,得られた情報を関連付けたり,表にしたり,図解したりすることで情報を整理することが考えられる。また,問題の解決策を検討するためにラフスケッチや絵コンテを作成したり,図やグラフによって情報を可視化したりすることなどが考えられる。これらを基に,適切かつ効果的なメディアやコミュニケーション手段を選択するための討議や試作,出来上がりを見通した設計に基づく役割分担と制作,適切な評価方法の決定とそれに基づく改善などを扱うことが考えられる。

【情報編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 30ページ

「(2)コミュニケーションと情報デザイン」全体を通しての学習活動として、具体例⑨が紹介されています。

  1. ブレーンストーミングやインターネットなどを用いて情報デザインに関する問題を発見し、それらを表や図解で整理する。
  2. 解決策を検討するため、ラフスケッチ、絵コンテ、図、グラフなどを用いて情報を可視化する。
  3. それらを踏まえて設計・制作し、評価を行って改善する。

という、壮大な活動です。

この活動を行うためには、生徒だけでなく教員も計画的に授業を進めていく必要がありそうです。

例えば教員が用意したGoogleドキュメントやJamboardなどを利用させれば、活動の様子を把握することができます。
この活動を行うには多くの時間が必要になるため、プロジェクトを成功させるためには活動の記録をデータとして残しておくと効果的であることも生徒たちに伝えていきたいところです。
手書きのメモやラフスケッチなども、タブレットのカメラで撮影して画像データにすれば、無くなることも劣化することもありません。(『(1)情報社会の問題解決』具体例①の活動の実践になる。)

長期間・複数人で行う制作の難しさと運用方法について学ぶことも、面白いかもしれません。

まとめ:知識を活用して制作・評価・改善する活動を行うことが求められている

改善

いかがだったでしょうか。

「(2)コミュニケーションと情報デザイン」では、情報デザインやコミュニケーションについて知り、その問題点と解決策を考え、実際に制作して評価・改善するという活動が求められています。

これまでは情報デザインに関する知識のみが重視されていましたが、新しい学習指導要領ではその知識を活用するところまで求められているようです。

時間のかかる活動が多く、更にはっきりとした答えのない分野なので教えていくのは難しいですが、授業を計画的に進めていくことで生徒たちに体験を通して深い学びを提供していきましょう!

『(3)コンピュータとプログラミング』の授業具体例については、後日記事にまとめたいと思います。

『(1)情報社会の問題解決』の授業具体例については、こちらの記事をご覧ください👇

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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