部活動顧問を拒否するために知っておくべき5つの法律・根拠

教員へ

こんにちは。福田泰裕です。

多岐に渡る業務、膨大な時間外無休労働など、教師の働き方の問題点が世間にも認知され始めています。

特に中学・高校教師にとって、最も多くの時間を取られ、時間的にも精神的にも大きな負担に感じているのは『部活動の顧問』です。

このブログ記事に到達したあなたは、きっと

部活動顧問…
できればやりたくないなあ…

と考えている教員の1人でしょう。
実際声に出さなくても、同じように「部活動の顧問をやりたくない」と考えている教員は多くいます。

私は2021年度に部活動顧問を拒否しようと、2020年度末から校長・教頭に訴え続けました。
結果として「学校運営上の理由」として運動部の副顧問に名前が載りましたが、部活動顧問としてのすべての業務を拒否することに成功しました。

休日の家族との大切な時間をつくることができたことと、勤務時間内は授業に専念できる環境ができたことで、教師としてのやりがいを大きく感じ、活力のある日々を過ごしています!

私が部活動顧問を拒否するためにやった事は、法的根拠による理論武装です。
ただ「顧問をやりたくない」と言うだけではダメです。
法律を知って論理的に説明できるようになれば、部活動顧問を拒否できる可能性が大きくなります。

この記事では、部活動顧問を拒否するために知っておくべき5つの法律や根拠をご紹介します。

最後まで読んでいただけると嬉しいです。

なぜ部活動顧問を拒否するのか

部活動顧問

「高校時代の思い出は?」

と聞かれると、多くの大人たちは

部活動で青春した日々!

と答えるでしょう。
日本人にとって、部活動というのは学校生活の一部…ではなく、学校生活の大部分といえる存在です。

しかし一方で、部活動顧問をする教員には様々なタイプの人がいます。

毎日練習を頑張って、県大会優勝を目指すぞ!

という部活動に燃える教員がいる一方で、

土日の試合のせいでまったく休日が無い…

平日も練習があって帰れない…

と、部活動の運営に疲れ果ててしまっている教員も多くいます。

実際、文部科学省が10年ごとに実施している「教員勤務実態調査」の平成28年度版を見ると、中学校教師の部活動に関する業務の負担の大きさは明らかです👇

教員勤務実態調査

私たち教師にとって、最も重要な仕事は『授業』です。
そのため、授業の準備にしっかりと時間を使うことができる環境が必要です。

しかし現実は授業以外の業務に忙殺される日々です。

中学校では放課後の部活動の時間になると、顧問は必ず活動場所にいなくてはならない場合が多いです。
活動が終わって生徒が下校する18時まで当たり前のように拘束される日々。
もう勤務終了時間を1時間もオーバーしています。

もし土日に公式戦があれば、朝から夕方まで拘束されることもあります。
自分の学校が敗退しても、審判や駐車場係、補助員などの仕事が割り当てられていて帰ることができません。
ヘトヘトに疲れ果てた状態で、また月曜日を迎えることになります。

さらに平日の日中も、活動計画の作成、練習試合の申し込みのための他校への電話、公式戦の申込書の作成、部費の管理など、部活動顧問としてやるべき事務作業が多くあります。

このような状況なので、

部活動がなければ、もっと授業に集中できるのに…

土日に休めれば、気持ちよく月曜を迎えられるのに…

と考えるのも当然と言えるでしょう。

  • 土日にしっかり休むため。
  • 授業準備に専念するため。

もしも部活動顧問の仕事が無ければ、教師としての働き方が大きく変わるのです。

部活動顧問って拒否できるの?

部活動

まず「そもそも、部活動の顧問って拒否できるの?」と疑問に思う方も多いでしょう。

公立学校の教師は公務員なので、地方公務員法第32条(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)が適用されます。

地方公務員法 第32条(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)

職員は、その職務を遂行するに当つて、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規定に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない

上司とは、校長・副校長・教頭のことです。

この地方公務員法第32条によって、校長・副校長・教頭は職員に対して職務命令を発することができ、職員はその職務命令に従わなければなりません。

じゃあ、校長や教頭から「部活動顧問をやれ」と職務命令を受けると、引き受けないといけないんだ…

と思うかもしれませんが、それは知識不足です。

教員採用試験の際に覚えるべき法律だけしか知らない教員には、部活動顧問を拒否することはできません。

しかし、ちゃんと法律を知って、それらを論理立てて組み合わせていけば、部活動顧問を拒否できるようになります。

部活動顧問を拒否するために必要なことは法的根拠のある理論武装

部活動顧問を拒否するために理論武装

いざ「部活動顧問を拒否したい!」と思っても、その思いだけでは校長・教頭に通じることはありません。

部活動顧問はやりたくありません。

子育てもあるので、土日は休みたいです…

とお願いしても、

教頭
教頭

一生懸命頑張っている生徒たちのためにも、ぜひお願いします。

他の先生方もやっているので…

というように、精神論で訴えても精神論で返されるだけです。
「生徒のため」「他の先生もやっている」という圧倒的精神論の前に、あなたの「休みたい」という個人的な精神論は通用しません。

精神論に対抗するために必要なことは、法的根拠のある理論武装です。

公立学校の教師は法律によって活動が制限されている一方で、法律によって立場が保障されています

これらの法律を正しく知って、法的根拠を示しながら論理的に部活動顧問を拒否できるようになりましょう。

部活動顧問を拒否するために知っておくべき5つの法律・根拠

部活動顧問を拒否するために法的根拠を示す

それでは、部活動顧問を拒否するために知っておくべき5つの法律・根拠を紹介していきます。

部活動顧問拒否のための法律・根拠①:学習指導要領 総則

まずは、学習指導要領における部活動の位置づけを確認しておきましょう。

中学校学習指導要領(平成29年告示) 総則 第5「学校運営上の留意事項」

1 教育課程の改善と学校評価,教育課程外の活動との連携等

ウ 教育課程外の学校教育活動と教育課程の関連が図られるように留意するものとする。特に,生徒の自主的,自発的な参加により行われる部活動については,スポーツや文化,科学等に親しませ,学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等,学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり,学校教育の一環として,教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際,学校や地域の実態に応じ,地域の人々の協力,社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行い,持続可能な運営体制が整えられるようにするものとする。

平成29年告示の中学校学習指導要領では、「部活動」という文字が登場するのはこの『総則第5』での一度のみです。
「部活動」は「教育課程外の学校教育活動」として紹介されています。

ちなみに、平成30年告示の高等学校学習指導要領でも、「部活動」という文字が登場するのは総則第6款「学校運営上の留意事項」の一度のみで、記載は中学校学習指導要領とほぼ同じく「教育課程学の学校教育活動」として掲載されています。

つまり、部活動とは学校の教育活動ではあるものの、教育課程外の活動であることが分かります。

部活動顧問拒否のための法律・根拠②:文部科学省HP「教員の職務について」

公立学校の教師は公務員であるため、地方公務員法第35条によって「職務に専念する義務」があります。
勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用いなければなりません。

それでは、教員の職務とは一体何なのか?
文部科学省のHPに掲載されています。

文部科学省HP「教員の職務について」

1.職務としての位置づけ

 「職務」は、「校務」のうち職員に与えられて果たすべき任務・担当する役割である(具体的には、児童生徒の教育のほか、教務、生徒指導又は会計等の事務、あるいは時間外勤務としての非常災害時における業務等がある。)。
 「校務」とは、学校の仕事全体を指すものであり、学校の仕事全体とは、学校がその目的である教育事業を遂行するため必要とされるすべての仕事であって、その具体的な範囲は、
 1. 教育課程に基づく学習指導などの教育活動に関する面
 2. 学校の施設設備、教材教具に関する面
 3. 文書作成処理や人事管理事務や会計事務などの学校の内部事務に関する面
 4. 教育委員会などの行政機関やPTA、社会教育団体など各種団体との連絡調整などの渉外に関する面
等がある。
 なお、職務の遂行中又はそれに付随する行為の際の負傷は、公務上の災害として補償が行われる。

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/041/siryo/attach/1417145.htm

教員の職務は「校務のうち、職員に与えられた任務・役割」であり、その「校務」は上の1~4等です。

気になるのは『1.教育課程に基づく学習指導などの教育活動』ですが、学習指導要領にあった通り「部活動は教育課程外の学校教育活動」であるため、部活動は教員の校務・職務には含まれません。

部活動が教員の職務でないならば、 地方公務員法第32条(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)「上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」という条文は完全に無効です。
なぜなら部活動は教員の職務ではないので、「部活動顧問を引き受けろ!」というのは「職務上の命令」にはなりません。

つまり、校長や教頭が「部活動顧問を引き受けてほしい」というのは職務命令ではなく、ただの『個人的なお願い』に過ぎないのです。

『個人的なお願い』なので従う必要はもちろんありませんし、強制することもできません。

部活動顧問拒否のための法律・根拠③:地方公務員法第35条「職務に専念する義務」

先ほども紹介した地方公務員法第35条(職務に専念する義務)を詳しく見てみましょう。

地方公務員法 第35条(職務に専念する義務)

職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない

教員採用試験を受験する際に覚えるべき地方公務員法第35条(職務に専念する義務)です。

公立学校の教師は、勤務時間と注意力のすべてを職責遂行のために捧げ、その勤務時間内は職務のみに従事しなければなりません

しかし何度も繰り返しますが、部活動は教員の職務ではありません

このことから、勤務時間内に部活動顧問としての業務を行うことは違法になるのです。

ここまででも既に学校現場の現状とは矛盾だらけで十分に法的根拠があるようにも思えますが、まだまだ続けていきます。

部活動顧問拒否のための法律・根拠④:公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)第6条

とても長い名前の法律ですが、『残業代を支給しない代わりに一律で4%だけ支給する』ということが定められている、あの忌々しい『給特法』です。

公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)第6条

教育職員(管理職手当を受ける者を除く。以下この条において同じ。)を正規の勤務時間(一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(平成六年法律第三十三号)第五条から第八条まで、第十一条及び第十二条の規定に相当する条例の規定による勤務時間をいう。第三項及び次条第一項において同じ。)を超えて勤務させる場合は、政令で定める基準に従い条例で定める場合に限るものとする。

2 前項の政令を定める場合においては、教育職員の健康と福祉を害することとならないよう勤務の実情について十分な配慮がされなければならない。

3 第一項の規定は、次に掲げる日において教育職員を正規の勤務時間中に勤務させる場合について準用する。

一 一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律第十四条に規定する祝日法による休日及び年末年始の休日に相当する日

二 一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)第十七条の規定に相当する条例の規定により休日勤務手当が一般の職員に対して支給される日(前号に掲げる日を除く。)

給特法第6条によると、教員を勤務時間を超えて勤務させることができるのは政令で定める基準に従い条例で定める場合に限ると規定されています。

その給特法第6条に出てくる「政令」とは、次のものです。

部活動顧問拒否のための法律・根拠⑤:公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令

公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令

内閣は、国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十五年法律第百十七号)の施行に伴い、及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(昭和四十六年法律第七十七号)第六条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定に基づき、この政令を制定する。公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(以下「法」という。)第六条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)の政令で定める基準は、次のとおりとする。

一 教育職員(法第六条第一項に規定する教育職員をいう。次号において同じ。)については、正規の勤務時間(同項に規定する正規の勤務時間をいう。以下同じ。)の割振りを適正に行い、原則として時間外勤務(正規の勤務時間を超えて勤務することをいい、同条第三項各号に掲げる日において正規の勤務時間中に勤務することを含む。次号において同じ。)を命じないものとすること。

二 教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合は、次に掲げる業務に従事する場合であって臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限るものとすること。
 イ 校外実習その他生徒の実習に関する業務
 ロ 修学旅行その他学校の行事に関する業務
 ハ 職員会議(設置者の定めるところにより学校に置かれるものをいう。)に関する業務
 ニ 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務

まず第一項に「原則として時間外勤務を命じないものとする」とハッキリ書かれています。

第二項では「時間外勤務を命じることができる場合」が示されています。この、

 イ 校外実習その他生徒の実習に関する業務
 ロ 修学旅行その他学校の行事に関する業務
 ハ 職員会議(設置者の定めるところにより学校に置かれるものをいう。)に関する業務
 ニ 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務

が、いわゆる『超勤4項目』と呼ばれるものです。

しかしその超勤4項目の前に、「臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限る」と書かれています。

つまり、単に「超勤4項目の場合は時間外勤務を命じることができる」という解釈は大きな間違いで、「臨時または緊急時の超勤4項目の場合のみ時間外勤務を命じることができる」というのが正しい解釈です。

つまり、日常的な業務や定期的な業務であれば、例え超勤4項目に該当する業務であっても時間外勤務を命じることはできません。

当然ながら、部活動顧問の業務というのは臨時に起こるものではないため、部活動顧問の業務をするために時間外勤務を命じることは違法となります。

あの忌々しい給特法も、ちゃんと理解すれば私たちの味方になってくれるのです。

まとめ:部活動顧問拒否は、法律を利用して論理的に行おう

部活動顧問を拒否するために法的根拠を示す

いかがだったでしょうか。

今回の記事をまとめると、次のようになります。

まとめ
  1. 部活動顧問は教員の職務ではないので、校長・教頭は部活動顧問を職員に命令できない。
  2. 勤務時間内に部活動顧問の業務を行うことは、地方公務員法第35条(職務に専念する義務)に違反。
  3. 校長・教頭が勤務時間外の部活動顧問の業務を命じることは、給特法第6条に違反。

このように、「部活動顧問の任命」「勤務時間内の業務」「勤務時間外の業務」は、法的根拠があればすべて拒否することが可能です。

ちゃんと勉強していて法律を知っている校長・教頭なら、年度末の部活動顧問を任命するとき、命令ではなく遠回しにお願いしてくるはずです。
それは、部活動顧問の任命から業務遂行まですべてが違法行為だと知っているからです。

そのような『法律を知っている校長・教頭』なら、上の法律たちを論理的に説明すれば分かってくれるはずです。
もし法律を知らずに「部活動顧問をやれ!」と命令してくる校長・教頭がいた場合は、「違法行為をしている!」と訴えられると可哀想なので、ちゃんと法律を教えてあげてください。

しかし、これらの法律を使って論理的に説明しても、おそらくあなたの学校の校長・教頭は「生徒のために」「他の先生もやっているから」という理由で部活動顧問を『お願い』してくると思います。
教師なら「生徒のため…」と言われると心が揺らぐものですが、休日はしっかり休んで授業に専念できる環境をつくり、良い授業をすることが最も生徒のためになるのです。
教師にとって最も重要な職務は授業ということを思い出してください。

公立学校の教師は、法律によって立場が保障されています。
これらの法律を正しく理解して自分の立場を守り、授業に専念できる環境を勝ち取りましょう。

こちらの記事では私の部活動顧問に対する個人的な思いをまとめているので、ぜひご覧ください👇

※ 最後に補足

私は、『部活動』を批判しているのではありません。
中学生や高校生が勉強以外の活動として、部活動(スポーツや文化的活動)に励むことは素晴らしいことだと思います。
部活動に一生懸命になることで、人間として大きく成長できることは間違いありません。

しかし、だからと言って『教師は時間外無給労働&休日返上で部活動の顧問をやるべき』というのは、論理が飛躍しすぎです。

部活動は日本に根付いた素晴らしい文化だからこそ、専門的な機関によって、その道の専門家たちに適切な給料が支払われる状態で運営されるべきです。

そのような環境になることを、私は願っています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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